牛乳

小学生の中頃までアレルギーで牛乳が飲めず、給食ではお茶とかを飲んでいた。牛乳嫌いの人からは羨ましがられていたが、乳製品と卵が食べられなかったのでアイスとかも食べられなかったりしてこちらも同級生が羨ましかったのを覚えている。

大して自我のない頃だから自分の我慢なんてたかが知れてるけど、親は相当大変だったと思う。

乳幼児の頃に祖母が誤って牛乳を飲ませてしまい瀕死になったことがあるらしく、アレルギーって結構大変なんだなと思った。その時に死ななくて良かったね。死んでいたら祖母はきっと苦しい余生を送ることになっていただろうから。

初めて牛乳を飲んだのは小児科の診察室だったのを覚えている。アレルギーが治ってきて牛乳も飲めそうなところまできていたらしい。牛乳というのはどんな味がするんだろうかと期待を膨らませていたけど、そんなにおいしくないな…というのが正直な感想だった。長年楽しみにしていたものがいざ叶い、理想とのギャップに消沈するあの感じは忘れられない。

母親に感想を尋ねられ、その時はおいしいと言ったけど、歯切れの悪さはにじみ出ていたので親もわかっていたような気がする。

似たような経験はこの前にもあって、庭に並べてあった丸々とした瓜を見てどうしてもあれが食べたいと泣きついていたけど、漬物にするから今は食べられないとたしなめられた。しばらく経って再開した念願の瓜は瑞々しいメロンのような見た目からは想像もつかないほど黒くて不味そうな見た目の漬物になっていた。

あんたが泣きついていた瓜だよと言われ口に運ぶも、正直おいしいとは思えなかった。だけど泣きわめいていた手前引けなかったのでおいしいと言って見栄を張った覚えがある。

そんな感じで牛乳との出会いも苦いものだったけれど、何度も飲んでいくうちにクセのある味わいにも慣れていった。牛乳を飲めば背が高くなるというのを信じていたのもあって、いつしかガブガブ飲むようになっていたけど一向に背は伸びなかったし、身長が止まってからそういう方便だったんだなと分かった。

牛乳を飲むと今でもこれらのことを思い出す…ということはなく、完全に生活の一部になった。牛乳を飲んでも特に何も思わないけど一連の経験が多少人格に影響を与えているかもしれない。好き嫌いもほとんどないし。